全世代・全世界の人が集まる”共同ディナー”

火曜日の夕方6時、大通りから少し入ったところの一角に次々と人が集まります。
なぜなら、Fællesspisning（フェッレスピースニング）が始まるから！
デンマーク語の”Fællesspisning（フェッレスピースニング）”を単純に日本語訳すると、「共同ダイニング」と出てきます。
この単語、長くてとても言いづらいですが、フェッレスピースニングはすべての人に開かれた共同ディナーなんです。

今や、世界の人が集まる”北欧の玄関口”となったコペンハーゲンでは、住む人の出入りも激しく、東京のように孤独を感じる人も少なくありません。共同ディナーには、地元の人だけでなく、わたしのようなNewComer（新参者の外国人）でも気軽に参加できます。

フェッレスピースニングが開かれる場所はコペンハーゲン内にいくつかあり、曜日も規模もコンセプトもばらばら。
わたしは知り合い一人いない状態で堂々とデンマークにやって来たわけですが、フェッレスピースニングに何度も足を運び、おかげで素晴らしい出会いがありました。

ただの”共同ディナー”では、東京でも人は集まらないはずです。ではなぜ、フェッレスピースニングに人が集まるのでしょうか？
私の考えでは、主な理由は３つ。
①提供される食事が美味しい
お味は安いレストランや学校・会社の食堂レベルと比べてはいけません。デンマーク料理というよりも、他の国にインスパイアされハーブ・スパイスを上手に使ったお料理がテーブルに並びます。どのような人でも食べられるように、大抵はヴィーガンのメニューになっています。

②様々な人たちの交流の場になる
子ども連れの家族から学生、仕事仲間、友人同士、旅行者…誰にでもオープンで、集まる人たちは国籍も年齢も様々。レストランなら1グループ1テーブルですが、少し大きめのテーブルに複数のグループが集うので、グループで分断されることなく新しい繋がりを作ることができます。

③お手頃な価格設定で気軽に来やすい
デンマークで外食をすると、すこぶる値段が高いです。お酒を飲むわけではなくでも、通常1人3000円はかかります。そのような中、フェッレスピースニングの価格設定は600～2000円。自分の好きなものを食べたい分だけ大皿から取るので、沢山食べたい人も食の細い人も、自分に合った量に調節できます。

ではここで、私が最も頻繁に通っていたフェッレスピースニングでの、とある一日のメニューを写真（全2枚）と共にご紹介します。

①ライス
②レンズ豆の煮込み
③ババガヌーシュ（焼きナスのペースト、中東料理）
④野菜の煮込み
⑤ビーツといんげん

⑥じゃがいものポタージュ
⑦パン
⑧サラダ

ここで皆さんにお伝えしたいのは、これらの材料となる野菜・パンはすべてスーパーやパン屋で廃棄予定だったものだということ。

デンマークと言えば、これまで独自の方法でフードロスの削減に取り組んで注目を集めてきました。その一つが、賞味期限間近・パッケージが破損している・間違ったラベルが貼られているなどの”訳アリ商品”だけを集めて販売するスーパーマーケット¹。コペンハーゲン内に、複数の店舗が存在します。

その他には、カフェやテイクアウト店の売れ残り商品を安く購入できるアプリがヒットし、様々な取り組みの成果としてデンマークは最多時の約4分の1の食品廃棄量を削減することに成功しました。

一方で、残念ながらデンマークはEUの中で、いまだ一人当たりの食品廃棄の量が最も多い国の一つとも言われています。²
良くも悪くも、フェッレスピースニングが開かれる日には近所のスーパーやパン屋から大量の野菜などが届き、その量は20人分の食事を作ったとしても材料を使いきれないほどです。そのため、このフェッレスピースニングでは、使い切れなかった材料やその日食べきれずに余った料理を、欲しい人が好きなだけ持ち帰ることにしています。